2001BOOK


5月 6月
書      名 著     者 書      名 著     者
えびす皇子 高橋克彦 運命の剣のきばしら 宮部みゆき他
存在証明 内田康夫 模倣犯 宮部みゆき
弟切草 長坂秀佳 心とろかすような
マサの事件簿
宮部みゆき
寄生木 長坂秀佳 黒祠の島 小野不由実
流転 新津きよみ 蔓の端々
(つるのはしばし)
乙川優三郎
そして粛清の扉を 黒武洋




 5月
えびす皇子 高橋克彦 幻冬舎 1700円

古代出雲地方は斐伊の里(現在の島根県木次町付近)に生を受けた少年シコオは、奇妙な噂を耳にした。阿用の里に「鬼」が出たというのだ。比類なき猛者として名を轟かせていたシコオは鬼退治に向かうが、その道中、光輝き宙に浮かぶ「船」に出会い、「因幡の国をめざせ」との声を聞く。そして自分と同じように因幡をめざす若者タカヒコ、タカヒメ、ナルミという仲間を得て、様々な試練を乗り越えていくのだが…。はたして「鬼」と「船」の正体とは―出雲神話を大胆に解釈した高橋版『古事記』。傑作伝奇小説。

この本を読んで思い出したのが『龍の柩』かな。シコオが因幡の白兎に会う部分とか、龍の〜に仮説として載ってたし。そういう仮説物語という部分では面白かったけれど、全体的に物足りなかった。続きがあるのかな?楽しみ。



存在証明 内田康夫 角川文庫552円税別

はにかんだ表情にありあまる好奇心を隠し、悪にはめっぽう強いが女性にはからっきし弱い。そんな軽井沢のセンセが本音で語る、浅見光彦のこと、推理小説のこと、世の中のこと。著者友人、浅見光彦氏の推薦文付き!?

内田先生の初のエッセイ集。私はエッセイ集はよっぽどの事がないと読まないのだけど、内田先生のエッセイ集だもん、読まんでか(笑) あとがきでも書かれているけど、作品の中の人物に言わせている事については、かなり強い事を書いても、「陰の人」でいられるけど、エッセイとなると自分の本音がストレートに読者に伝わるので、怖くて恥ずかしくて今まで出した事がなかったそうだ、でも面白かったですよ。これからもどんどん出していただきたいです。



弟切草 長坂秀佳 角川ホラー文庫640円税別

弟切草…その花言葉は『復讐』。ゲームデザイナーの公平は、恋人奈美とのドライブで山中、事故に遭う。二人がやっとたどり着いたのは、弟切草が咲き乱れる洋館だった。「まるで俺が創ったゲームそのものだ!」愕然とする公平。そして、それは惨劇の幕開けだった…。PlayStation版話題のゲームを乱歩賞作家の原作者がオリジナル小説化。

弟切草というゲームがあるらしい・・・
私は知らないのだけど、そのゲームの攻略本という事で最初書くことになった、というのをあとがきで読んでなるほど!と思った本でした(意味不明かな^^;)ゲームの通りに進んでいると気付きながら、命にかかわるとわかっていて、その通り進んで行ってしまうのよね。なんかな〜(^o^;) 角川ホラーから出てるけど、ちっとも怖くない。文体のせいでしょうか?



寄生木 長坂秀佳 角川ホラー文庫686円税別

新作ホラー小説の構想に悩む作家の元に、ある電話がかかってくる。小説「弟切草」の登場人物『松平直樹』と名乗るその男は、作家に「その小説を書くのは止めてください。ストーリー通りに人が殺される!〈ヒトラーの賭〉は、すでに始まっているんです!」と謎の言葉を…。しかし、ブリュッセル、ゲント、ナミュール…ベルギーの古都を舞台とした恐るべき殺人ゲームは動き出してしまった。中世フランドル絵画の傑作『神秘の子羊』に隠された謎とは!?『弟切草』ワールド三部作、ついに完結。

弟切草よりはずっと面白かったんだけど、どうしても私に合わない文体はそのまま、“ずきゅん”とか“へっく”とか“ぐふふ”はなんとかして欲しいよ〜!ホラーにこんなのが出てきたら、気がそがれちゃう(^o^;) 全体的に作りすぎてるきらいもあるけど、お話は面白かったですよ。



流転 新津きよみ 双葉文庫800円税別

夏の暑い日、アパートの隣室へ無断で入り込んだ女を殺してしまった女子大生の鈴木かおる。彼女は遺体を処分、完全犯罪を心に誓う。一方、サイコ・セラピストの須山久美子は、殺人の告白やら、抑えきれない殺意の存在という電話を受ける。久美子のまわりで、暑い夏は次第に複雑な様相を帯びていく。七本の糸が一つに結び合わされるとき驚愕のドラマが。





 6月
運命の剣のきばしら 宮部みゆき他 PHP文庫667円税別

中村隆資・鳴海丈・火坂雅志・宮部みゆき・安部龍太郎・宮本昌孝・東郷隆の7人の作家が、それぞれの持ち味を生かし7つの物語を書き継いた空前のリレー小説!鎌倉末期、備前長船で生まれた剛刀「のきばしら」は、将軍斬殺という嘉吉の乱を引き起こし、切腹を迫られた茶人・利休の灯籠を斬る。やがて太平の江戸時代、質屋夫婦の命を救った「のきばしら」は幕末の"三人斬り"岡田以蔵の手に渡り維新動乱のなかで女剣士の仇を討って、ついに終戦前夜の皇居に現れる…。

やはりリレー小説という事で、一作一作変わる作家の方の文体に、馴染めない事もあったけど、お話し自体はみんな面白く読めました、一振りの剣「のきばしら」が、時代を超えていろいろな人の手に渡って行く過程を、7人の作家の方が、うまくまとめてると思います。
私がこの本を買ったのは、宮部みゆきさんの名前を見つけたからなんだけど、彼女の作品「あかね転生」は、ホラー&人情あふれていて、私は一番好きでした。ちょうど真中で江戸時代を書かれていたのだけど、前と後をうまく繋げていたようでした。その他には「明治烈婦剣」が好き。宮部さんと言えば、↓で読んだ「模倣犯」「心とろかすような」とこの「あかね転生」みんな重要な役で犬が出てくる、犬好きな私はよけいに楽しめる♪



模倣犯(上・下) 宮部みゆき 小学館上下各1900円税別

公園のゴミ箱から発見された女性の右腕。それは「人間狩り」という快楽に憑かれた犯人からの宣戦布告だった。誰もかれも、殺された側のことなんか、これっぽっちも考えてくれやしない・・・。(上)
炎上しながら谷底へ落ちて行く一台の車。事故死した男の自宅には、数々の「殺人の記録」が。事件を操る真犯人の正体は…!?嘘をつくのは易しい。難しいのは、ついた嘘を覚えておくことだ。(下)
あまりにも切ない結末!魂を抉る驚愕と感動の三千五百五十一枚。直木賞受賞作『理由』以来三年ぶりの現代ミステリー。

読み終わってからなかなか感想が浮かんでこない本でした。頭の中でシャッフルしてるような感じ。
『被害者の家族』の心情がひしひしと伝わってくる。一人一人の登場人物に感情移入できたし、細かく丹念に描かれていたので、誰から取り上げたらいいのかと迷っているくらい。
有馬義男は一番かわいそうな方でしたね、犯人に翻弄されて遊ばれてしまった上に、娘・孫があんな事になってしまったし、でも全編通して一本筋が通っているようなとても素敵な方でした。なので最後があまりにも私にはやりきれない…。
塚田真一は、最初なぜこんなに弱く頼りないのかと(自分の家族に起こった事件のせいなのですが)いらいらしたけど、いろいろな人の中でどんどん成長していく過程が好ましく思えました。
最後まで栗橋浩美の事を心配していた、高井和明の優しさがとても印象に残りました。それに比べて妹の由美子は、最初あんなにはっきり元気だったのに、どうしてあんなになっちゃったんだろ、兄のカズの最後と合わせて、あの兄妹救いがない。親も不憫だわ。
ピースはダメです、ほんとに許せません。でもあのようにTVとかに出てきたら、私も一般の人のように応援しちゃうかも。最後に義男に言われた事はざまあみろ!とちょっと救われた。
容疑者とされた家族も被害者の家族も仕事にまで悪影響を及ぼされるのは、世の中がやはりおかしすぎるよね。でも、加害者の家族の場合は仕方ないのかな?やはり憎む対象が必要なのかも。。。でもやっぱりこれは間違っているよ。



心とろかすような
マサの事件簿
宮部みゆき 創元推理文庫620円税別

あの諸岡進也が、こともあろうに俺の糸ちゃんと朝帰りをやらかしたのだ!いつまでたっても帰らない二人が、あろうことかげっそりした表情で、怪しげなホテルから出てきたのである!!―お馴染み用心犬マサの目を通して描く五つの事件。さりげなくも心温まるやりとりの中に人生のほろ苦さを滲ませ、読む者をたちどころに宮部ワールドへと誘っていく名人芸を、とくとご堪能あれ。、「心とろかすような」「てのひらの森の下で」「白い騎士は歌う」「マサ、留守番する」「マサの弁明」の5作

元警察犬・マサが語る短編5編の事件簿です。パーフェクトブルーの続編。
マサかっこいいよ〜♪
「心とろかすように」の題名の意味が怖面白い^^;
「マサ、留守番する」の中に出てくる犬の“はらしょー”、ご飯も満足にもらえず散歩にも連れて行ってもらえず、そして・・・このはらしょーの運命はあまりにも悲しかったよ。うさぎの件と合わせて、考えさせられる話でした。人間の身勝手さが、動物を不幸にしている、その反面それを救おうと一生懸命考える子がいる。後者のような優しい気持ちをみんなが持てたらいいのに。
全体的に文体が柔らかいので、事件の暗さを救ってくれるところはあるけど、「白い騎士は歌う」などせつなくなるなぁ〜。



黒祠の島 小野不由実 祥伝社ノン・ノベル886円税別

その島は風車と風鈴に溢れ、余所者には誰も本当のことを話さなかった―作家葛木志保が自宅の鍵を預け失踪した。パートナーの式部剛は、過去を切り捨てたような彼女の履歴を辿り、「夜叉島」という名前に行き着いた。だが、島は明治以来の国家神道から外れた「黒祠の島」だった…。そして、嵐の夜、神社の樹に逆さ磔にされた全裸女性死体が発見されていた…。島民の白い眼と非協力の下、浮上する因習に満ちた孤島連続殺人の真相とは?実力派が満を持して放つ初の本格推理。

「黒祠」とは、明治政府の採った祭政一致政策によって編成されたものに、統合されなかった神を言うそうで、迷信の産物で「邪教」とされている。そんな黒祠の島に調査員式部は、友人の失踪の謎を追って渡るのだけど、閉鎖的な島民相手に孤独な闘いをしています。読んでいるとこんな島ないだろ〜とどうしても思っちゃう設定だけど、そんな島の気質だからこそ、この事件は起こったのだろうし、事件のトリックもうなずけるかな。



蔓の端々
(つるのはしばし)
乙川優三郎 講談社1700円税別

7歳で父の組子・瓜生仁左衛門に預けられた禎蔵は、剣術に自力で這い上がる道を見出し、出世した。しかし、否応なく藩内の大きな力に巻き込まれていく下級武士の悲哀を身近に感じながらも、幼なじみの失踪と、父の死の謎を問い続ける。藩権力に翻弄される下級武士たち。その中で、若き剣術師範は、手探りしながらも誠実に生きようとする。

私の好きな作家「藤沢周平さん」を思い出される作家です。時代小説には、文章力・心理描写・物語と、ほんとに素晴らしい作品が多く楽しめますが、この本も読んで良かった!と思った1冊でした。内容は明るいものではなく、どちらかというと暗いのだけど^^; なぜ幼なじみは突然消えてしまったのか?実父の死の謎は?とミステリー部分も楽しめた。ちょっと納得出来なかったのは、幼なじみの失踪の理由かな。導入部分とあまり繋がらなかった。



そして粛清の扉を 黒武洋 新潮社1500円税別

一人の女教師が学校に血の戒厳令!卒業式前日、人質の生徒処刑が始まった。一人、また一人……。もう誰も逃げられない―。周到な計画、警察との攻防。強行突破か、説得か。タイムリミットが刻々と迫る。TV生中継のなか、ついに教師は用意された身代金で、前代未聞の「ゲーム」を宣言した……。新潮社主催のホラーサスペンス大賞第1回受賞作

生徒・同僚からずっと無視されてきた、そんな女教師が、自分の担任する生徒29人を人質として教室に立てこもるの。ほんと結構きちゃいますよ〜この女性教師、頭良すぎて怖いくらい、ホラーの怖さじゃなくて冷たさのような怖さ。でも、底辺を流れているのは、熱く悲しい思いかな。子供を暴走族に殺された彼女は、もう失うものが何もなくなって。。。徹底して書かれているので、読んでいてほんとに面白かった。選考委員の宮部みゆきさんが、巻末の選評の中で、「生身の人間がいちばんホラーだという結論でした」と書かれていたけど、まさにそんな感じの1冊。





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